学生・院生・卒業生インタビュー「電子情報工学科で見つけた未来」

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インタビューVol.7 卒業生に聞く、キャンパスライフ 阪大を舞台に後進を育てること、そして自分の
代名詞になるような研究をするのが夢です。

企業の研究員を経て准教授として阪大に戻ってきた荒瀬さん。企業と大学、先生と生徒の両面から見た阪大について語ってもらいました。

情報科学研究科 准教授 鬼塚研究室
※2006年電子情報エネルギー工学科(現在,電子情報工学科)卒業。
2010年大学院情報科学研究科博士課程修了。
[主な研究分野]自然言語処理 [趣味]ヨガ [出身高校]徳島県立海南高等学校

荒瀬 由紀先生YUKI ARASE

学外で働き、立場を変えたことで新たな阪大の魅力が見えました。

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阪大の電子情報工学科は院に進む人が多いと聞きましたが…

おっしゃる通りです。実際、うちの情報システム工学コースでは約98パーセントが大学院に進みます。ほぼ全員ですね。理系の情報系は特に進学率が高いんです。修士課程を終えておいたほうが就職に有利と言われている側面もありますが、わりと入学の時から修士課程に進むと決めている人が多いです。修士の2年間で、自分がやりたい研究をより深めたいという人が多いのかもしれませんね。

荒瀬先生は博士課程まで進まれたんですよね?

最初は4年で卒業して就職するつもりでした。ちょうど就職率が上がっていた頃で、『今のうちに就職しないと!』という思いが強かったですから。でも結局、研究室の先生に進学を勧めていただいたこと、研究熱心な先輩への憧れもあって大学院に進むことにしました。院に進んでも早く研究を終わらせたい一心で、「期間短縮制度」を使い、一年短縮して博士になれました。「期間短縮制度」というのは欧米の「飛び級」制度のようなもので、専門性の高い研究を早くスタートさせたい学生をサポートするもの。やる気と能力があれば、大学院博士前期(修士)課程で1年、大学院博士後期課程(博士)課程でも1・2年間短縮して修了できる制度です。

博士を卒業されてから就職されたと聞いたのですが、就職活動はどうされたのですか?

課程博士3年間のうち、2年目に11カ月間、マイクロソフト・リサーチにインターンシップで行きました。すごく研究環境が良かったので、ここに就職したいなと思いましたが、研究所なので博士号がいるとのことで、入社したのは博士課程を終えてから。そこからは北京で働いていました。

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会社での研究テーマを教えてください。

会社に入ってから、博士の時と大きくテーマを変えたんです。自由度の効く研究所だったので、「博士のときの研究にとらわれなくていいから、長い人生でやりたいテーマを見つけてきなさい」と言ってくれて。言語に興味があったので、会社では主に日英の機械翻訳を手掛けていました。

再び大学に戻ってきたのはなぜですか?

帰国して阪大に戻ってきたのは2014年です。自分の研究の興味がより基礎的な部分に移ってきたというのが大きな理由でした。そんな時、ちょうどいいタイミングで准教授のポストに空きがあったので、そこに申込み、運良く前いた研究科で働くことが決まりました。企業で手掛けていた機械翻訳は、今も学生と一緒に研究しています。人間が入力した日本語の文を自動で英語や多言語に訳してくれるという、今、一番研究競争が激しい分野です。

今はどんな研究をしているのですか?

自分がやりたかった研究を、思うままにやらせていただいています。一例として、去年から学生と一緒にAppleのSiriや日本マイクロソフトが開発した会話ボット(チャットボット)の一つ「りんな」のように、人工知能でチャットをするような研究をしています。人の精神状態によってどうしたら寄り添うような対話ができるのか。ユーザの気持ちがネガティブな時、それに寄り添った発言をどうするか、うれしい、喜んでいるときにどういう反応をすれば、よりユーザがチャットボットに好意を持ってくれて、いい関係が築けるかといった研究です。怒っているのか悲しんでいるのかなど、人の気持ちがわからないといけない。つまりユーザの発言した内容からどういう気持ちでいるのかを推定しなければいけません。次に、そこからその感情に即したシステムからの発話がどういうものなのかまだよくわかっていなません。ユーザがネガティブなときに無駄にポジティブな発言をするとイラっとされるかもしれないし、ネガティブなときに一緒にネガティブな声をかければ、ますます落ち込むかもしれないし。これからちょっと心理学も勉強しないといけないかなと思っています。この研究は「りんな」を作っているマイクロソフトとの共同研究として進めています。

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准教授として教える立場になったことで何か変化は
ありましたか?

学生たちに教えるというのは、研究者としても本当に良い経験になります。よく言われることですが、自分でわかっているつもりでいても人に説明しようと思うとうまく伝えられなくて理解の深さが足りないことに気づきます。教える側として学生に何を聞かれてもちゃんと「こうですよ」と言えるようにしないといけないので、知識がしっかりと身になります。それに、研究をしているとどうしても深く入り込んじゃうことが多いのですが、人に説明するときは広く俯瞰しないと伝わらないので、そういう視点を新たに手に入れることができました。それともう一つ、これは学生だった頃にはまったく想像もつかなかったのですが、先生ってこんなにも学生のことを考えてくれてたんだとわかりました。授業一つをとっても、その準備にどれだけの時間がかけられ、心が配られていたのかというのは、授業をやってみないと一生わからなかったかもしれません。それに、けっこう一人ひとりのことを見ているんですよ。あの子いつもこっち見ていないなとか、あの子はすごく熱心に聞いているなとか。

研究と指導、その他の仕事に避ける時間はどんな割合ですか?

研究と指導と学内の仕事とでは割合的に4:4:2ぐらいです。研究と指導は多少オーバーラップするのですが、それでも自分のやりたい研究ができる喜びは大きいです。戻ってきてよかったと思っています。

戻ってみてわかるこの学部の魅力はなんでしょう?

まず、いろんな分野の第一線で活躍されている先生方が幅広くいるということでしょうね。たとえば翻訳だったら旧大阪外国語大学の先生がいらして、その中でも言語学的アプローチをとっている方と一緒に共同研究することもできるし、データ解析する際に医学部の先生から医療データをもらったりすることもできます。このようにかなり幅広く、工学にかかわらずいろいろな分野の先生方と協力しあえるというのは総合大学の強みでしょうね。

今後の研究者としての夢をお聞かせください

自分の代名詞になるような研究をするのが夢です。「気持ちがわかる対話システム」といえば荒瀬だよね、と言われるぐらい他の研究者にも役に立つような論文を書いたり、研究成果を出したりしたいですね。人間の知性や知能にも昔から興味があるのでが、単純に言語で統計的に研究しているところを、もっと別のアプローチからも掘り下げていきたいです。
さらに一人の女性研究者としての視点から話をすれば、もっと女性研究員が増えて、いろいろなライフスタイルが存在するようになればいいなと思っています。今はまだバリバリ働くスーパーママさん研究員と、結婚や出産、介護を機に研究をあきらめてしまった元女性研究員という二極化するモデルしか見当たらず、男性のように「ああいう感じでいくと、何歳ぐらいでこうなる」という人生プランやキャリアプランを、身近な例を参照に描くことができません。時代も変化しているので過去の例もあまり参考になりませんし、せめて女性が3割を占めれば、産休、育休、介護支援ほかシステム自体も変わり、女性研究員、そしてもちろん男性研究員の多様な働き方にも柔軟に対応できるのではないかと思うのです。まずは模索しながら私の生き様を開示して(笑)、女性研究員のライフプランの一例として後進の道を少しで拓くことができればと願っています。

最後に受験生へのメッセージをいただけますでしょうか。

工学部には研究の最先端を行く、すばらしい先生方がたくさんいらっしゃいますから、興味をもったことはためらわずにどんどん質問するなど貴重な出会いを大切にしてほしいです。一流の先生をつかまえて何でも聞けるのは学生たちだけの特権です。そういう特権を存分に利用してほしい。大学4年間なんてアッという間ですから。
入学前にこれからどうしたいかわからないという人は、ぜひオープンキャンパスに来てください。学生が案内することも多いのでリアルな大学院生の姿を見てもらえます。研究室も一番にいい成果を披露したいので、研究の最先端を垣間見ることもできると思いますよ。話をしてみたい先生がいれば、事前にメールなどでアポを入れてみるのもいいかもしれないですよ。先生でなくても学生から研究室の裏話を聞くことができるかもしれません。そうやって、ここ阪大で、自分のしたいこと、わくわくすること、楽しいと思うことをどんどん見つけてくれるといいなと思います。

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