世界レベルの研究を誇る阪大工学部。
中でも時代の最先端をいく分野として知られる電子情報工学部で
輝くリケジョ、女子研究生&卒業生がキャンパスライフや
リケジョあるある研究の魅力や将来の夢までをせきららトーク。
進路選びに迷う後輩リケジョに熱いメッセージを送ります。
※本座談会は2016年冬当時のものです。
リケジョになるまで
リケジョへの道、なかでも工学を選んだ理由を教えてください。
清藤小学生のときから社会よりは算数、理科のほうが楽しかったので、将来は理系に進もうと決めていました。
大植、山下、太田私も同じです!(笑)
清藤ちょうど高校生のときに『リケジョ』という言葉が流行りはじめていて、工学部のニュースがテレビでよく流れていたんです。工学部の女子もけっこう取り上げられていて、ちょっと面白そうだなという印象をもちました。
大植私も理系科目が得意だったので高校は理系に進んだのですが、その時点ではとくにやりたいことは決まっていませんでした。ただマスコットづくりとか、ものづくりは好きだったので、受験前にいろいろな学部の研究内容を調べていくうちに機械を使うのが楽しそう、と工学部への興味が芽生えました。
山下私も小さいときから理科や数学が得意で、むしろ国語や社会ができないぐらいだったので、理系しかないと思っていました。高校時代は物理が得意だったので理学部もいいかなと思ったのですが、私もものづくりが好きだったし、ホームページなどで見ていくと工学をやっている人たちが楽しそうに見えたんです。研究している内容も面白そうで、工学部のほうが向いているかなあと選びました。周囲のリケジョも小さいころから理系が得意だからと工学部に決めてきた人は多いですよ。
太田家族の影響もあります。皆さんと同じで小学校ぐらいから算数や理科が得意で、母にも『あんたは理系やな』と言われてきたし、高等専門学校の出身でパソコンやカメラが好きな父の姿を見て育ってきて、私も同じだなと思って工学部に興味を持ちました。
荒瀬私は知能や知性に興味があったので心理学系に進むか理系に進むか迷っていました。関係する本を読むうちに、心理学で扱う『人の気持ち』と自分が興味がある『知能』は違うことが分かってきました。ちょうど人工知能のはしりとして犬型ロボット「AIBO(アイボ)」が世に出てきたころで、脳の仕組みのようなものを工学部の情報系で研究していると知って、じゃあそっちのほうがいいかなと思って工学部に進みました。
数ある工学部のなかでも阪大を選んだ決め手は何でしたか?
太田関西に行きたかったからで。
清藤そこ?!(笑)
大植私も実家から通えるところを探していて…結局今は下宿していますけど。
清藤確かに私も姉夫婦が近くに住んでいるので、親的にも初めての一人暮らしも安心だろうと許してくれた感じです。
山下私も関西で大学を探していて、阪大は工学部が強いといわれていたので決めました。小さいころからピアノをやっていたこともあって音に興味があったのですが、調べていたら情報の分野のようなので、その分野のある大学、学部を選びました。
荒瀬私も阪大工学部が強いと聞いて決めました。東工大とも悩んだのですが、総合大学のほうが何となく広がりがあっていいかなと思って阪大を選びました。
リケジョってどんな感じ!?
みなさんが思うリケジョは?
清藤世間から見たら眼鏡のイメージですよね。今日、眼鏡は私だけですけど(笑)。
山下同じ理系女子の中でも理工の女子って、医歯薬の女子とは違うんですよね。医歯薬なんかはまだ女子率が高いので、女子らしい感じがします。
太田わかります!
清藤キラキラしていますよね。
山下理工の女子は、そもそも女子の少ない環境でもやりたいことをやると決めて入ってきているので、意志が強い人が多いような気がします。
荒瀬在学中と今とくらべて比べると阪大生は全体的に垢抜けた気がします。当時は「イカ阪」、いかにも阪大生(服がださい、真面目そう)と言われていたのですが、今は皆さんシュッとしていてオシャレだし、女子率も高くなったような気がします。
一同イカ阪って、今も使っています!(笑)
クラスに女子が1人、2人という阪大リケジョならではの環境はどうですか?
清藤教室に入って知らない女子がいると、それだけで“女子がいる~”とうれしくなります(笑)。
一同それ、わかる~!
大植私は女子高出身なので、1回生の頃はクラスで女子が私1人しかいないという状況に驚きましたが、毎回そんな感じなのでだんだん慣れてきました。私の学年は女子5人のうち4人が女子高出身ですが問題ないですよ。
山下女子はサバサバした人が多いですね。
清藤喧嘩なんかしないし、口喧嘩していても、だんだん会話が合理的になっていって、解決策を見つける議論みたいになって…喧嘩になりません。
女子が少なくてよかったこと、困ったことってありますか?
太田トイレがきれいで込まないのがいいです。
荒瀬そこ?!(笑)
清藤受験の時なんて男子学生用に仮設トイレまでできて列もすごかったけど、女子はガラガラでしたから、その分、集中できました。
太田きれいなトイレの場所から試験対策まで、いろいろ情報がまわってくるし、女子ネットワークってなかなかやりますよ。
山下都合のいいレディ・ファーストはあるけど。重い荷物を持ってくれるし、研究室旅行でも1人部屋だし、いい時はいいんです。でも自分たちが先にやりたくないことは『レディ・ファースト』とか言ってやらされる(笑)。でも、サークルも研究室も男子だから女子だからというのをあまり感じないですね。特別扱いはないし、良い意味であまり性別を意識することがないです。
清藤少ないからこそ、今日みたいにすぐ仲良くなれるのはいいなと思います。女子同士、会う機会も多いですし、同じ学年だったら1回生の最初のクラスの集まりの日に女子同士声をかけあって、ほぼ全員と知り合える。今でも女子会で集まったりしていて、つながりも強いし、その縁がずっと続いています。
教授や先輩に顔を覚えてもらえるっていう利点もあります。諸刃の剣で、授業を退出できなかったりするのですが(笑)。それこそ研究室紹介へ行ったら『君、授業を受けてくれている子だよね』とか『この間の講演会に来てくれていた子だね』とかいろいろ声掛けしてもらえて、自然に人脈が広がっていきます。
山下そういえば、うちの研究室も60人規模で忘年会があるのですが、『この前いたよね』とかよく先生方が声をかけてくれます。
何だか女子の方がよく良くしてもらっているように思えてきました
荒瀬そうですね。逆に男子学生にどんな良い点があるのか聞いてみたいです(笑)。
リケジョの研究事情
研究していて楽しいことは?
清藤八木研究室では人工視覚を扱っています。後天的に全盲になってしまった人への人工視覚ということで、人工的に景色を見せてあげるような回路をプログラミングしたり機械をつくったりする一方、実際どのように情報伝達が行なわれているのかという生物学的な面からもひも解いていくという、両側からアプローチしていく感じです。いつかその二つを合体することが目標です。3回生までの勉強漬けの日々でインプットしたことを、次にどうやっていかしていくかを考えたり、実際、自分で行なっていけたりすることは楽しい。これぞ研究?という入口に立った感じです。
太田私も同じ八木研究室ですが、個人の研究テーマは清藤さんとは違っています。現在、てんかんやパーキ ンソン病など、脳の中での神経伝達に障害があることによる病気に対して、電気刺激を用いて症状を改善するということが行なわれています。 そこで私は電気刺激を行なうための電極を新しい素材でつくる研究をしています。脳は柔らかくて動くのですが、今使われている金属電極は固 いので、私は柔軟性のあるカーボンナノチューブで電極を作ります。学部4回生の卒 業研究を始めたばかりで、まだ成果もあがっていないので本当の楽しさを味わってはいないのですが、自分でこれをやろうと考えるのは、面白いです。
大植私はレーザーエネルギー学研究センターでレーザーを扱った研究をしています。半導体を加工するために使うレーザーの研究で、研究が進めば半導体を小さくすることができて、たとえば製品ももっと小型化できる。それにはレーザーの出力の強さが問題で、出力を大きくするためどう工夫するのかを研究しています。レーザーという身近ではないものをつかっていますが、半導体という身近なものにいかされている実感があります。入学したときはレーザーを扱うようになるとは想像していませんでしたし、実は希望する研究内容ではなかったのですが、振り返ってみると高校生のときに興味があった分野でもあったので、結果的には良かったと思っています。
山下私は人とコンピューターをつなぐ間の部分、ユーザインタフェースの分野で学習支援に使えるデバイスづくりに取り組んでいます。新しい学習支援のためのペンをつくろうというテーマをいただいて、ふだん学習に使っている鉛筆などのペンにセンサーをつけて筆記状況を認識し、この人は今どんな風に勉強しているかとか、学習の理解度がわかるのではないかという自分なりの仮説のもとに研究を進めています。自覚はなかったのですが、新しいことを発見したときに楽しいみたいで、毎週ミーティングの場で「おもしろいことがわかったんですよ!」と枕詞のように言っていたらしくて、担当教官から『すごく楽しそうだよね』と言われて、あ、楽しいんだと気づきました(笑)。
荒瀬私は去年から学生と一緒に人工知能でチャットをするような研究をしていますが、やはり面白いのは、こんなことがあったんだ!と新しいことがわかったときですね。
山下研究室ではそれぞれ自分のテーマをもって一人で研究を進めているのですが、意見交換はみんなでやっていて、そういう発見をどんどん言っていけるのもワクワクします。
清藤むしろ言わないと、アイデアやアドバイスを先生や先輩にいただけないので、議論が活性化するのがいいですよね。
荒瀬アイデアをきちんと相手に伝えて議論するのが得意な女子学生は多いですね。
女子は思い切りがいい子が多いかもしれませんね。プレゼン力が高いかも。
皆さん研究のことになると饒舌ですね。しかも同じ工学部でもレーザーから医療系まで、想像以上に扱っている分野が幅広いんですね。
「研究は大変」とよく聞くのですが、そうでもない?
山下思うような結果が出てくれないときは本当につらいですよ。テーマを完全に放り投げることはありませんが、無理だと思ったら方針を変えて違う手法でアプローチするとかはよくあります。
荒瀬問題が大きすぎてむずかしいときはもうすこし細分化したり、細かく過程を置いてできない範囲を狭めたり。
清藤卒論や修論、学会とか、ゴールや締め切りがあるときの追い込みは、先輩を見ていてもつらそうです。私も近い未来、経験するんだろうな…。
大植最近、研究している部屋に工事が入って研究ができなくなってしまい、予定が狂ってしまって大変ということもありました。
太田でも、研究そのものはやっぱり面白いです。
一同そうじゃなければ続かないよね~(笑)。
リケジョのアフタースクール
研究以外の学生生活はどんな感じですか?
太田そこは理系文系関係ないです。バイトしたり、サークルに打ち込んだり、遊んだり。私が入っていた卓球のサークルは本気でやる人から、ゆるっとやる初心者までいろいろでした。体育館でずっとしゃべっていたし、合宿に一番いらないのはラケットと卓球シューズだといわれるぐらい卓球していなかったけど、いろんな人と知り合えて楽しかったです。
清藤他学部の学生と比べて工学部に入ったから生活が一変するということはないですね。ただ、文系が先に就活で忙しくなって、私たち理系はあとから院試で忙しくなるというように忙しくなる時期が違ったりはしますけど。私はバイトもしていますし、中高で続けてきた茶道を続けたくて阪大の茶道部に入っていました。
一同リケジョだからって特別じゃないよね。
大植3回生まで実家から通っていたので、サークル活動には入りそびれました。説明会には顔を出して、一度、かくれんぼうサークルに参加したことがありますけど。私が行ったときは豊中キャンパスの基礎工学部周辺で隠れる回でした。
一同広すぎて見つからなさそう!
太田新歓だったら、誰が誰かわからないですよね(笑)。
大植バイトは下宿を始めた4回生から始めました。塾の講師で、最初は教える自身がなかったのですが、周りからやってみたらと言われて始めた感じです。
山下私は中学の吹奏学部でクラリネットやっていたので、オーケストラに入りました。オーケストラのクラリネットは目立つからうれしい(笑)。でも、大学院に入ってからの忙しさにはちょっとびっくりしました。研究室によって忙しさの度合いは違いますが、学部の4回生で研究室に配属されたときは授業もほぼ取り終わっていて研究だけで良かったのが、院の一回生は授業と研究の両立が大変。修士課程に入ってからはさすがにバイトの日数を減らしました。
荒瀬私はサークルには入らず、バイトでアパレルの販売をしていました。店長にならないかとまで言われてどうしようか真剣になやんだ時期もあったぐらい打ち込んでいました(笑)。気分転換のためにも研究とはまったく関係のないことをしたかったんです。
それぞれ研究の傍ら充実した学生生活を送られていますね。
リケジョの夢
将来の夢を聞かせてください。
清藤卒論の分野と同じである必要はないですが、6年間で培った技術を使えるような、もしくは使えなくても糧にできるような企業に就職したいと考えています。特に関西では旧帝大の大阪大学というネームバリューが思った以上に大きくて、工学部だけでも幅広い活躍しているOBさんがたくさんいらっしゃいます。世界中で大阪大学の名が出回っているんです。私もその一員として、活躍するのが夢です。
太田高校のときの同級生に看護とか医療系を目指す子が多くて、そういう子たちの役に立ちたいな、医療機器関連にかかわれたらいいなと思っていました。好きで得意な工学系に行きたい、医療系の役に立ちたい、それなら医療工学だ!と今の研究室も選びましたし、大学院でもそういう研究ができたらいいなと思っています。就職も、研究職にこだわらないで、売る方でもいいから医療機器関連にかかわりたいです。
大植私はソフトウェア開発系の会社に就職が決まっています。1回生の時のプログラミング授業で興味をもったのがきっかけです。プログラミング関係の研究室には行けなかったものの、研究室の先生が優しい方で、機械のプログラミングなどもさせていただけたので、希望する会社に就職することができました。阪大のOBはいたるところにいらっしゃるので就職活動をするにあたってあまり興味のなかったところも含めてOB訪問に行き、いろいろな製品づくりの現場や、企業の世界を知ることができたのは良い経験でした。
山下昨夏に企業にインターンシップで行った時に就職にするか博士課程に進むか決めようと思っていたのですが、まだ悩んでいます。小さいころから何かつくることが好きだったし、今でも研究で新しいことがわかったときはうれしいので、就職するなら新しいものを売り出す企画や開発がいいかなと思い、いろんな企業の説明会に参加しています。その一方で研究室の先生は皆さん『博士の時間が一番楽しかった』とおっしゃいますし、博士課程へ進むという選択肢もまだ捨てきれずにいます。
荒瀬研究が好きなら博士はすごく楽しいと思いますよ。一番自分の時間を自由に使える、好きなことができる3年間という意味で人生最後の夏休みですからね、博士課程は。私は博士を取った後に北京にあるマイクロソフトの研究所で働いていたのですが、基礎研究に重みを置いた研究ができるというところに魅力を感じて大学に帰ってきました。
リケジョの後輩へラブコール
最後に、サイトをご覧の後輩に一言メッセージをいただけますでしょうか。
大植アルバイト先の塾で『将来、数学なんか何に使うの?』とか聞かれたりしますが、意外と必要になる場があったりします。何に使うかとかと関係なくいろんなことに興味をもっているのは大事だと思いますよ。
清藤持っている情報は多いほど使い道がありますし、選択肢や可能性が広がりますよね。アンテナを張っておいて正解です。
太田女子が少ないからという理由だけで工学部を避けるのはもったいないです。意外に大丈夫だから、やりたいんだったらその道をあきらめないでほしい!
山下そうそう。女子が少なくて困っている女子なんてまずいないので。私も研究室で女子一人ですが、困ったことはありません。
荒瀬進路を考えたとき、最終的にかかわりたい道へ向かって選択していくのがベストかなと思います。何を勉強するにしても当事者意識が生まれるじゃないですか。それが見つかるか見つからないか、見つかる時期にも個人差はありますが、変化してもいいですから漠然とでも考えてみてください。きっと学ぶ楽しみも身につくスピードも変わってきますよ。
阪大のリケジョは、日々、ワクワクしながら
世界トップレベルの研究に夢中になっています。
女子受験生のみなさん、
『大阪大学工学部・電子情報工学科』で
世界レベルのリケジョをめざしてみませんか?